国際法学会へようこそ

国際法学会は1897年(明治30年)に創設された法律学の分野ではもっとも古い学会です.主に国際法学,国際私法学,国際政治・外交史学の専門研究者によって構成されています.現在,会員数は1000名を越えようとしており,その約1/3が大学院生・助手を中心とする若手の会員です.毎年春と秋の2回,研究大会が開かれ,また機関誌『国際法外交雑誌』を年4回発行しています.その他,『国際関係法辞典』を出版したり,時宜に応じて特別の刊行物を出版したりしています.最近では1997年の創立百周年を祝って『日本と国際法の100年』(全10巻)を刊行しました.研究大会には外国人の報告者を招聘するほか,国際シンポジウムの開催にも力を注いでいます.1990年に日加両国の学会が共同開催されたのを皮切りに,2000年までに日米加三国国際シンポジウムを3回にわたり開催し,また1997年には百周年記念の特別事業として「日本と国際法――過去・現在・未来」という統一テーマの下に,2003年秋には通常の研究大会の中で「多様性の中の統一――21世紀国際法とアジアの視点」と題して,国際シンポジウムを開催しました.日米加三国シンポジウムの成果はシリーズTrilateral Perspective of International Lawとして全部で3冊を刊行,百周年記念の成果はJapan and International Law: Past, Present and Future(1999,Kluwer)として刊行しています.2003年のシンポジウムについてもProceedingsを刊行予定です.

ところで近代日本は,明治国家の成立以来,条約改正,日清・日露戦争,二度の世界大戦,そして冷戦など,大きな時代の変化の荒波にもまれてきました.国際関係を対象とする法を扱う研究者の集まりである国際法学会も時代の流れにあるいは翻弄され,あるいは孤高を保ちながら,苦難の道を歩んできました.冷戦終結後,時代は大きく転換し,戦後日本外交が掲げてきた国連中心主義がようやく花開いたかに見えました.しかし9・11同時多発テロを契機に,歴史の次のうねりが大きく打ち寄せようとしています.対テロ戦争,対イラク戦争,さらに北朝鮮問題と,日本の外交の舵取りも難しい局面を迎えています.国際法学会は,先人達がその中に身をおいた歴史の経験を踏まえながら,各会員の地道な学問研究と議論を通じて,新しい時代のあるべき国際社会の姿,そのなかでの日本のあり方を模索しています.

学問が高度化し,その専門性が高まって来ると,専門研究者は学問の内在的論理に自足し,その自己完結的な世界に閉じこもりがちになります.このHPは会員相互の間で専門性の壁を取り払って情報を共有することに一つの目的があります.またもう一つの目的は,急速に変動する21世紀を迎えて,その社会的な責任を個々の会員が今一度自覚して,社会の信頼に耐えうる専門研究をより一層深化させていくことにあります.自らを社会の批判に曝すための前提として国際法学会を会員以外の方にもよりよく知っていただくとともに,必要に応じて資料を掲載するなど,専門性を踏まえた情報を的確に社会に発信することに努めるとともに,いっそうの改善を目指して模索・検討し,このHPを充実させていくつもりです.折にふれてこのHPにアクセスしていただき,忌憚のないご意見,ご批判を賜れば幸いに存じます.

2003年10月

国際法学会理事長
奥脇 直也