国際法学会のホームページをご覧いただき、誠にありがとうございます。このホームページは、国際法学会の会員のみなさまにご案内を差し上げ、また、会員が相互の間で情報交換をされる場です。さらに、非会員のみなさまにおかれましても、ご関心をお持ちくださる方々に、国際法学会について知っていただくための場でもあります。
最初に、国際法学会の「横顔・プロファイル」をご紹介いたします。
国際法学会は、国際法、国際私法、国際政治・外交史の三つの分野にわたり、それらを専門とする、現在、約900名の会員からなっております。大学や研究機関に所属する研究者、外務省や法務省などの政府職員、弁護士などの実務家、大学院生などの方々が会員です。
次に、学会活動ですが、これは多岐にわたります。
主に会員が参加する活動には、以下があります。まず、研究大会です。1年に一度、3日間の年次大会が開催されます。すべての出席者が一同に会する全体会や、いくつかのテーマに分かれて同時並行で開催される分科会があります。また、公募報告の制度が採用されています。2020年研究大会は、コロナ禍により、開催中止となりましたが、2021年研究大会の開催にむけて、着実に準備をすすめております。つづいて、出版事業としては、国際法学会は、『国際法外交雑誌』を年に四回、出版しています。論文等の投稿制度を設けております。研究大会での報告や、雑誌への寄稿において、公平な機会の提供を確保するように努めております。くわえて、国際活動として、2018年6月には、七回目となる日、米、加、豪・NZという、四つの国の国際法学会共催による国際会議(2年ごとに各学会が輪番でホストとなって開催)が東京で開催されました。2020年の同国際会議は、コロナ禍で、2021年に延期されました。また、大韓国際法学会とも、協力のための了解覚書を2016年に更新して、交流を継続しています。
さらに、国際法学会は、広く非会員のみなさまをも対象として、関係専門分野の研究を奨励し、情報を提供する活動を行っております。これも、多岐にわたります。
関係専門分野の文献目録作成などの研究教育上のサーヴィスの提供、日弁連との協力事業による社会連携活動、関係専門分野に関わるカレント・トピックスの解説の随時発信、外務省との共催によるアジアカップ模擬裁判の開催、三期27年にわたり国際司法裁判所裁判官であられた小田滋先生の篤志に基づいて設立された、小田滋賞論文の公募などがあります。
これらの多岐にわたるすべての活動については、会員、非会員のみなさまに周知するために、ニューズレターやホームページにより、随時、ご案内しております。
こうした学会の活動を担う学会の体制ですが、これは、評議員会、理事会、監事、11の委員会からなります(国際法学会ホームページ、「学会役員・委員名簿」ご参照)。
さて、現在の姿を造り上げてきた国際法学会は、120年余にわたる長い歴史を刻んでまいりました。そこで、国際法学会の歴史をご紹介したいと思います。それは、日本の歴史とも歩みをともにしております。
国際法学会は、1897年(明治30年)に、国際法の研究、国際知識の普及、改正条約の研究という三つの目的を実現するために創設されました。法律学の分野では、日本で最も古い学会です。一国の国際法学会としては、世界で最も古い学会の一つです。1902年には、学会誌である『国際法雑誌』(1912年に『国際法外交雑誌』と改題)が創刊されました。当時、東洋で唯一の国際法雑誌とされ、世界的にも、一国の国際法専門誌としてはフランス(1874年)、ベルギー(1889年)に次ぐ歴史を誇っています。
日本は、みなさまご承知のように、鎖国政策をとっておりましたが、江戸末期に、欧米列強により開国を迫られました。開国後、欧米列強との関係で、治外法権の承認や不平等条約の締結を余儀なくされました。そうした日本の歴史的困難に対処する一環として、国際法学会が設立されたのです。日本が世界列強に伍するようになった後も、国際法学会は、第一次世界大戦、国際連盟脱退、第二次世界大戦などに直面してきました。日本の外交政策と密接にかかわる問題を扱う国際法学会は、多くの諸先輩方のご苦労と英明なご判断により、こうした歴史的困難を乗り越えて発展してまいりました。
それだけではありません。国際法学会の体制整備としては、2012年10月、旧財団法人国際法学会は、一般財団法人国際法学会として、一層の体制強化をはかりました。新法人への移行に伴い、各種規程の整備、定款にしたがった国際法学会の管理運営の仕組の再編成などを行いました。諸先輩方のご苦心により、120年余の歴史と900人規模をもつ国際法学会の確固たる体制が、築き上げられました。
わたくしたちは、この国際法学会を、引き継ぐとともに次へと継承していく、重大で、そして、誉ある役目を担っております。
国際法学会は、日本の近代化のために国際秩序を貪欲に吸収した不屈の精神を、現在も維持しています。そして、それだけではなく、国際法学会は、新しい国際秩序の主体的な創造を企てる果断な意志を、着実に醸成してきています。コロナ禍で、日本が未曽有の災厄を経験したことも、転じて、国際法学会が、新しい、関連する国際秩序の構築を提言する機会といえるかもしれません。
会員におかれましては、コロナ禍にあっても、研究活動をたゆまずに推進しておられることと思います。国際法学会が、その研究の一つの基点となることを、願ってやみません。非会員におかれましては、それぞれのお立場とご知見から、国際法学会へのご関心やご要望を抱いてくださっているのではないかと思います。国際法学会とその活動が、みなさまにとって、身近でなにがしかの糧になることを、願ってやみません。そのために、会員におかれましても、非会員におかれましても、いついかなるときでも、国際法学会への忌憚のないご意見、ご批判を賜りますように、どうぞ、よろしくお願い申し上げます。
ホームページは、24時間、みなさまに向けて、発信し続けております。
2020年9月
一般財団法人 国際法学会
代表理事 兼原 敦子