代表理事 植木俊哉

 国際法学会のホームページにアクセスしていただきまして、誠にありがとうございます。このホームページは、国際法学会の会員の皆さまへの情報提供と会員相互間の情報交換の場であると同時に、非会員の皆さまに国際法学会を紹介させていただく場でもあります。
 国際法学会は、1897年(明治30年)に創設された、法律学の分野では日本で最も古い学会であり、本年2022年に創立125周年を迎えました。本学会は、アメリカ国際法学会の創設(1906年)よりも10年ほど早く創設されており、一国の国際法学会としては世界で最も古い学会の一つでもあります。1902年には、学会誌である『国際法雑誌』(1912年に『国際法外交雑誌』と改題)が創刊されますが、当時、東洋で唯一の国際法雑誌とされ、世界的にも一国の国際法専門誌としてはフランス(1874年)、ベルギー(1899年)に次ぐ古い歴史を有しております。
 国際法学会は、国際法の研究、国際知識の普及、改正条約の研究を目的として、1897年に創設されました。国際法学会が歩んできた125年の歴史は、日本が歩んできた近現代の歴史そのものでもありました。この125年の間に、日本は、条約改正、日露戦争、第一次世界大戦、国際連盟脱退、第二次世界大戦など多くの問題や困難に直面してきました。国際関係を規律する法をその研究対象とする国際法学会も、このような歴史の荒波にもまれながら、諸先輩方のさまざまなご苦労と不断の努力により、多くの歴史的困難を乗り越えてまいりました。
 現在でも、世界の情勢と日本を取り巻く国際環境は決して楽観できるものではありません。しかし、このような事実は、国際法が国際社会において果たすべき真の役割とそれに関する理論的・実証的研究の重要性をますます高めているもの考えられます。国際法学会では、このような課題に応え、さらに望ましい国際社会のあり方、そこで果たすべき国際法の役割の検討等を通じて、国際社会における法の意義をさらに深く探究してまいりたいと考えております。
 国際法学会の会員は、国際法、国際私法、国際政治・外交史の三分野のいずれかを専門としており、大学や研究機関に所属する研究者、外務省や法務省などの政府関係者、弁護士などの実務家、さらに大学院生など、さまざまな方々で構成されています。現在の会員数は約900名で、一国の国際法学会としては世界有数の規模を誇っています。
 2012年、旧財団法人国際法学会は一般財団法人国際法学会に移行し、それに伴い各種規程の整備や定款に従った評議員会、理事会、各種委員会の整備など、国際法学会の管理運営の仕組みが改編されました。
 国際法学会の研究大会は、新法人に移行した2013年度以降、コンベンション方式により毎年3日間の日程で開催しております。研究大会では、研究企画委員会の企画による全体会や分科会のほか、公募報告の制度が採用され、公平な報告機会の確保が図られています。2020年度の研究大会は、コロナ禍により開催中止となりましたが、2021年度の研究大会はオンライン方式により開催され、2022年度の研究大会は3年ぶりに対面方式で開催予定です。また、長い歴史を有する学術専門誌として評価の高い『国際法外交雑誌』についても、その質の維持向上に務めると同時に、論文等の投稿制度を設け、会員の研究成果発表の機会を提供しております。
 また、本学会は、各国の国際法学会との国際交流にも力を入れております。米国、カナダ、オーストラリア・ニュージーランドの3つの国際法学会と共同で、四国際法学会国際会議を隔年で輪番により開催し、その成果を著書として刊行しています。2018年には、第7回四国際法学会国際会議を本学会の主催により開催しました。2020年に米国で開催が予定されていた第8回四国際法学会国際会議は、コロナ禍のため開催が延期されましたが、2022年8月にオンライン方式で開催されました。また、大韓国際法学会とも、協力のための了解覚書を更新し、交流を継続しております。
 さらに、3期27年にわたり国際司法裁判所裁判官を務められた小田滋先生の篤志に基づき、小田滋賞を創設しました。この賞は、国際法、国際私法、国際政治・外交史の各分野における若手研究者の育成を目的として、大学生・大学院生による優秀な論文に対して授与されるものです。また、小田滋記念講演(The Honourable Shigeru Oda Commemorative Lectures)は、本学会の研究大会に外国の高名な国際法研究者を招聘し、日本の会員とともに英語で報告・討論を行うもので、隔年で開催されています。
 そのほかにも、研究振興委員会による研究教育上のサービスの提供、アウトリーチ委員会による日本弁護士連合会との協力事業などの社会連携活動、エキスパート・コメント委員会による国際関係法に関する専門知識の提供、さらに若手研究者育成委員会と外務省の共催によるアジアカップ国際法模擬裁判大会の開催など、本学会は多くの事業に積極的に取り組んでおります。これら諸事業の内容につきましては、本ホームページや会員の皆さまへのニューズレター、学会誌である『国際法外交雑誌』等を通じて、ご案内をさせていただいております。
 国際法学会では、その長い歴史と伝統を踏まえ、かつその国際的な責任を果たすため、国際関係法に関する研究を一層促進し、その専門的な研究成果を国際的に発信するための努力を重ねてまいたいと考えております。皆さまにおかれましては、国際法学会への忌憚のないご意見、ご批判を賜りますよう心よりお願い申し上げます。

2022年8月

一般財団法人 国際法学会
代表理事 植木 俊哉